※上部にある「私のプロフィール」で、私のことを「知って」から読むと、より楽しめるかもしれません。
小学生の頃、職員室前には「Take Free」と書かれた引き出しが設置してあった。
その中には、多種多様なbrochureがぎっしりと詰まっていた。
それらは定期的に入れ替えられていたため、私は週に一度ほど、「今日は何が入っているのだろう」と確認することを楽しみにしていた。
しかし、どれだけ中身が入れ替わろうとも、そこには必ずと言っていいほど、某プロ野球球団が主催する試合の無料招待チケットらしきものが置かれていた。
枚数は毎回およそ100枚。
しかし、人気がなかったのか、あるいは誰も興味を示さなかったのか、いつ見てもその枚数はほとんど減っていなかった。
そのため、私は毎週のように、その7割ほどを持ち帰っていた。
目的はただ一つ。
そのチケットの半券を「もぎる」ためである。
1枚のチケットを切り取るだけなら通常の切り取り線に沿って紙を裂く「ペリペリ」という軽い物理しか味わえない。
しかし、枚数を5枚、10枚……と増やしていくと、状況は変化する。
切り取るためには、指先に少しずつ強い力が必要になるのだ。
そして、紙が裂ける速度も徐々に遅くなり、単なる「切断」ではなく、「紙そのものが抵抗している感覚」を味わうことができるようになる。
そのため、最初の頃は10枚程度で満足していた。
しかし、次第に欲求は大きくなり、最終的には、その日に持ち帰った全てのチケットの半券を一度にもぎ取るようになった。
もちろん、小学生の力で全てを一度に、しかも綺麗にもぎることは容易ではない。
しかし、稀にそれを達成することができた。
その時には、
「一度に大量の紙が切り離される瞬間に響く、短いながらも低く響く破裂音」
「日常生活ではなかなか感じることのできない、紙から指先へ伝わる重々しい抵抗感」
「左手には幅広いチケット本体、右手には幅の狭い半券を、それぞれ寸分違わず持っているという達成感」
当時の自分にとっての「最高級の五感」を味わっていたのである。
更に、その両手に握られたそれらチケットをゴミ袋へ向かって思い切り投げ捨てる。
すると、先ほどまで整然と並んでいた紙片が、一瞬にして無秩序に散らばっていく。
その背徳感もまた「快楽」であった。
そして、何より、誰にも知られず、邪魔されることもなく、70枚程度のチケットを毎週のように「自分の快楽」のためだけに持ち帰ることができるという「密かな独占感」こそが、この「快楽」を増大させたのだった。
チケットをもぎるという快楽
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